水曜の夜9時、子どもを寝かしつけてからようやく一人になれる時間。スマホを開くと、3か月前からお付き合いしている彼からメッセージが届いていました。「今週末、久しぶりに会えそう」。ここ最近は仕事が忙しいからと会う頻度が減っていましたが、それでも毎晩の「おやすみ」の連絡は欠かさない人でした。何気なく彼の名前でSNSを検索してみたところ、見覚えのない女性のアカウントに、彼らしき人物と小さな子どもが一緒に写る写真がタグ付けされているのを見つけてしまいました。プロフィール欄には「〇〇家」という文字。手が震えて、それ以上スクロールを続けられませんでした。
「まさか」と思いながらも、心のどこかで「そういえば」と引っかかっていたことが次々に浮かんできます。土日はいつも都合が悪い。自宅の住所は「今、引っ越し準備中だから」と教えてもらえなかった。電話よりメッセージを好み、深夜や早朝の連絡はほとんどない。ひとつひとつは些細なことでも、並べてみると妙にきれいに辻褄が合っていたのです。
婚活で出会った相手が実は既婚者だった、というケースは決して珍しい話ではありません。恋愛感情が絡んでいるぶん、「まさか自分が」と思っているうちに気づくのが遅れやすく、発覚した後も何をどうすればいいのか分からず立ち尽くしてしまう方が多いのが実情です。この記事では、婚活詐欺のなかでも身近に潜む「既婚者による独身詐称」について、手口の傾向から発覚後の対処法、そしてそもそも巻き込まれないための選び方までをまとめました。
婚活で増えている詐欺の種類(ロマンス詐欺・結婚詐欺・投資勧誘)
婚活の場に潜む詐欺には、大きく分けて3つのタイプがあります。1つ目は、恋愛感情につけ込んで金銭を要求する「ロマンス詐欺」。2つ目は、結婚をちらつかせながら金品を騙し取る「結婚詐欺」。3つ目は、親密になった相手に投資や暗号資産への出資を持ちかける「投資勧誘型詐欺」です。
そして、これらとは少し性質が異なるものの、婚活中の女性が実際に遭遇しやすいのが「既婚者が独身だと偽って交際する」ケースです。金銭的な被害こそ伴わないことも多いものの、時間や気持ち、時には貞操権を侵害される深刻なトラブルであり、法的にも「婚活詐欺」の一種として扱われます。こども家庭庁が2024年に実施した調査では、直近5年間に結婚した既婚者2,000人のうち、配偶者と出会ったきっかけとして「マッチングアプリ」が25.1%で最多という結果が出ており、アプリ経由の出会いが一般化した今だからこそ、相手の身元をどう確かめるかが切実な課題になっています(こども家庭庁「結婚に関する意識調査」)。
典型的な手口(最新データ・警察庁統計)
会わずにメッセージだけで親密になる
既婚者が独身を装って交際する場合も、ロマンス詐欺と同じく「会う頻度を最小限に抑える」という共通点があります。休日はいつも予定が合わない、自宅や職場の場所を曖昧にしたまま話をそらす、電話よりメッセージのやり取りを好み、深夜や早朝の連絡は避ける傾向にある、といった特徴です。これらは「家庭がある生活リズム」を隠すための行動であることが多く、単体では気づきにくいものの、積み重なると不自然さが見えてきます。
警察庁のSOS47(特殊詐欺対策ページ)によると、令和7年(2025年)のSNS型ロマンス詐欺の認知件数は5,604件(前年比+1,780件、+46.5%)、被害額は552.2億円(前年比+151.4億円、+37.8%)と、認知件数・被害額ともに大幅に増加しています(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」)。金銭が絡まない既婚者詐称のケースは、こうした公式統計に表れない「隠れた被害」として、実際にはさらに多く発生していると考えられます。
「二人の将来のために」と投資・送金を促す
ロマンス詐欺の場合は、ある程度信頼関係ができたタイミングで「二人の将来のために」と投資や送金を持ちかけてくるのが典型的な流れです。既婚者による独身詐称でも、これと似た心理操作が使われることがあります。「結婚を考えている」「一緒に住む場所を探そう」といった将来の約束を先に提示することで、相手に安心感を与え、疑いを持たせないようにするのです。
共通するのは、「言葉での約束」ばかりが先行し、住民票や独身証明書といった客観的な証拠を伴わない点です。本気で結婚を考えている相手であれば、身元をはっきりさせることに抵抗はないはずです。将来の話が具体性を欠いたまま繰り返される場合は、一度立ち止まって考える必要があります。
狙われやすい人の特徴と、40代以上が標的になる理由
既婚者による独身詐称は、40代以上の女性が特に遭遇しやすいトラブルの一つです。理由の一つは、婚活市場において「同世代の独身男性」の絶対数が限られていること。もう一つは、40代という年齢になると「そろそろ結婚を決めたい」という焦りから、相手の言葉を信じたい気持ちが強く働きやすいことです。子育てが一段落した、離婚や死別を経験したなど人生の節目を迎えている場合、「もう一度誰かと歩みたい」という前向きな気持ちが、かえって相手の嘘を見抜きにくくする側面もあります。
また、東京都消費生活総合センターの統計では、マッチングアプリに関する2024年度の相談件数は809件にのぼり、2019年の80件と比較すると依然として高い水準にあることが分かっています(東京都消費生活総合センター調べ)。恋愛感情が絡む場だからこそ、冷静な判断がしにくくなるのは、年齢を問わず誰にでも起こりうることなのです。
詐欺を見分けるチェックリスト
次の項目に複数当てはまる場合は、一度立ち止まって相手を見直してみてください。
・休日や連休は「いつも都合が悪い」と会えない理由が繰り返される
・自宅や職場の住所、勤務先の詳細を教えてもらえない、もしくは曖昧にされる
・深夜・早朝・平日昼間の連絡がほとんどなく、決まった時間帯にしか返信が来ない
・電話やビデオ通話より、文字のやり取りを一貫して好む
・SNSのアカウントが複数あったり、共通の友人がまったく見当たらなかったりする
・結婚や同居の話は熱心にするのに、独身証明書などの客観的な証拠は見せようとしない
・家族や実家の話になると、急に話題を変えたり言葉を濁したりする
一つひとつは「忙しいのかな」で片付けられてしまう内容ですが、複数当てはまるようであれば、その違和感を「考えすぎ」で終わらせないことが大切です。
安全に婚活するには(本人確認のある相談所のメリット)
万が一、交際相手が既婚者だったと発覚した場合、慰謝料を請求できる可能性があります。相手が独身だと偽っていたことに故意や過失が認められれば、貞操権の侵害として損害賠償の対象になり得るからです。実際に、婚活アプリで「独身」だと嘘をつかれていた女性が慰謝料200万円を命じられた判決や、東京地裁が既婚男性に88万円の賠償を命じた事例も報道されています(朝日新聞「婚活アプリで『独身』とウソ 慰謝料200万円命じる判決も」)。ただし、証拠の有無が結果を大きく左右するため、メッセージのやり取りやプロフィール画面のスクリーンショットは、疑いを持った時点で必ず保存しておいてください。発覚後に関係を続けてしまうと、その時点から不貞行為とみなされるリスクもあるため、事実を確認できた段階で速やかに関係を断ち、必要であれば弁護士や法テラス、警察相談専用窓口(#9110)に相談することをおすすめします。
とはいえ、本来であれば「出会った時点で相手の身元がはっきりしている」に越したことはありません。マッチングアプリやSNSは出会いの間口が広い一方で、既婚かどうか、経歴に嘘がないかを確かめる仕組みがほとんどなく、見抜く責任がすべて自分に委ねられてしまいます。
結婚相談所で既婚者による詐称がほとんど起こらないのは、入会時の審査が厳格だからです。運転免許証やマイナンバーカードによる本人確認に加えて、独身証明書や収入証明書の提出が一般的に求められ、カウンセラーとの面談を経なければ入会できない相談所も少なくありません。「本当に独身なのか」「経歴に偽りはないか」という根本的な不安を、出会う前の段階で解消できるのは、アプリやSNSにはない大きな安心材料です。
いきなり入会を決める必要はありません。まずは資料を取り寄せてみる、無料相談で話を聞いてみる。その小さな一歩が、「安心して人と向き合える場所がある」と実感するきっかけになるはずです。
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